ワンルームより

短歌

第74回栃木県芸術祭文芸賞でU25賞を受賞した短歌作品です。

「ワンルームより」>

「ワンルームより」

田は空を向き空の色この街は人を映さぬ鏡は足りぬ

「よくできた息子より」と父へ向け電報飛ばす6月某日

車輪へとまきこまれゆく蝶の翅 そのひとひらにシャッターが落ちる

陽炎の中にいるのに見えません 猫車押す祖父のあの背が

むべがいた。見向きもされぬ電柱に磔にされ咽び泣いていた。

ちょうどいいあなたのジャージのえんじ色 雨にちぎれた紅葉を拭くには

水雪の靴に染み入る冷たさを慰めてやる さみしかったね

情報の集まりであるもっと前ただのあなたに降る牡丹雪

あなたの目 大きくはなくただ深くその雪だるまの対になるもの。

好きだった季節が終わりやってくる給食カレーのスプーンの味